人事・総務のご担当者さま、そして経営者のみなさま。こんにちは、ハカルです。
ハラスメント対策の話は、たいてい「守り」のトーンで語られます。義務だから、訴訟が怖いから、企業名の公表が怖いから——。それはたしかに本当のことで、以前このコラムでも「代償」の重さについてお話ししました。
でも今日は、少し視点を変えます。ハラスメントの芽を早めに摘んでいる会社は、リスクを避けるだけでなく、離職率・満足度・組織の活気という"攻めのリターン"も手にしている——というデータの話です。
人材紹介サービス「doda」が実施した転職理由ランキング(2025年版・正社員1,059名対象)を見ると、こんな結果になっています。
1位 給与が低い・昇給が見込めない 33.6%
2位 人間関係が悪い/うまくいかない 22.7%
3位 社内の雰囲気が悪い 21.1%
お金の話がトップに来るのは当然ですが、2位・3位は「人」と「空気」です。給与を上げるには時間もコストもかかりますが、人間関係や社内の雰囲気は、必ずしも大きな予算がなくても手をつけられる領域です。
厚生労働省の令和5年度「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間にパワーハラスメントを受けたと回答した労働者は19.3%。そして、受けたときにどうしたかを聞くと、最も多い答えは「特に何もしなかった」で36.9%にのぼります。
これは、社員の3割以上が「相談しても仕方ない」「大ごとにしたくない」と、心の中にしまい込んでいる、ということです。不満は、辞めるまで見えない。そして見えないまま静かに積み重なったものが、ある日、突然の退職として表面化します。
同じ調査では、企業側にも聞いています。「自社でパワハラが発生したと認識している」と答えた企業は64.2%。ところが、そのうち53.2%が「認識したあと、特に何もしなかった」と回答しています。
ここが分かれ道です。同じように問題が起きても、「ちゃんと対応してくれた」と感じられた組織と、「見て見ぬふりをされた」と感じられた組織では、そのあとの社員の信頼度はまったく違うものになります。ハラスメント対策の本質は、"起きない努力"と同じくらい、"起きたときにどう反応するか"にあるのかもしれません。
ハラスメントの措置義務が求めるのは、大きく3つ——方針の周知、相談窓口の整備、迅速な対応です。あらためて見ると、これはどれも「言いたいことを、言える状態を作る」ためのしくみだと気づきます。
そして面白いのは、この"言いやすさ"は、ハラスメントの相談だけに効くわけではないということです。同じ土台の上で、業務の提案・改善案・小さな違和感といった、ふだんの声も上がりやすくなります。ハラスメント予防と組織の活性化は、実は同じ根っこを持っている——というのが、ハカルの見立てです。
サイボウズ株式会社は、2005年ごろ離職率が28%という状態でした。そこから「100人いれば100通りの働き方があってよい」という考え方のもと、働き方の制度だけでなく、社員どうしが本音で意見を出し合う"対話の文化"づくりに力を入れてきました。結果として、離職率は4%前後まで下がったと報じられています。
制度そのものより、「なぜその制度が必要か」を社員どうしで説明し合う文化(質問責任・説明責任)を重視。トップダウンで押さえつけず、意見を言いやすい風土を作ったことが、結果的に離職率の大幅な改善につながった、とされています。
また、相談窓口を複数用意する企業や、匿名の意識調査(パルスサーベイ)を定期的に行う企業では、社員が声を上げる前の"小さな不調"を早めにキャッチできるようになった、という報告も見られます。特別な予算をかけた大改革というより、「気づける仕組み」を先に置いておくという発想が共通しています。
ここまでの話に共通しているのは、どの会社も「まず今の状態を知ること」から始めている、ということです。制度や研修を立派に整えるより先に、現場の言動や空気が「今の基準」でどのあたりにあるのかを、具体的に把握する。そこから初めて、優先順位が見えてきます。
なにハラ!?メーターの法人版は、この「まず知る」を小さく・具体的に始めるための道具です。研修の前の現状把握や、相談窓口の手前の入口として使えます。