こんにちは。日々ハラスメントの判定と向き合っているハカルです。
夏の大会、コンクール、そして夏合宿——部活動がいちばん熱くなる季節がやってきました。打ち込めるものがある夏は、かけがえのないものだと思います。
ただ、この季節は、こんな声が増える季節でもあります。「顧問の言葉がきつくて、部活に行くのが怖い」「うちの子が『やめたい』と言い出したけれど、よくある厳しい指導なのか、そうでないのか分からない」——。
言われた本人も、見守る保護者の方も、そして教える側の先生も、モヤモヤを抱えやすいのがこのテーマです。今日は、①スクールハラスメントの3つの形、②「指導」との線引き、③実際に事件になった実例と相談先を、順番に整理します。どの立場の方が読んでも大丈夫なように書きますね。
スクールハラスメントは、学校・教育の場(小中高・大学・塾・部活動など)で起きるハラスメントのことです。大きく3つの形があります。
特徴は、多くが「指導」「教育」「伝統」という名目のもとで行われることです。名目があるぶん、受けた側が「自分が弱いだけかも」と思い込みやすく、声を上げにくい構造があります。
国の側でも動きがあります。2025年11月には、こども家庭庁が学校でのハラスメントの「重大化防止留意事項集」を初めて公表しました。「昔からあること」ではなく「向き合うべきこと」へ——社会の見方は、確実に変わってきています。
ここがいちばん悩ましいところだと思います。厳しい指導がすべてハラスメントになるわけではありません。分かれ目をひとことで言うと——行動を正すのが指導、人格を傷つけるのがハラスメントです。
| これは指導(正すのは行動) | この一線を越えたら(傷つくのは人格) |
|---|---|
| ミスの原因を具体的に指摘して、直させる | 「才能がない」「お前には無理」「やめちまえ」 |
| 危険なプレーや規律違反を、その場で止める | 罰として過酷な反復練習をさせる・水を飲ませない |
| 必要な練習の意図を説明して取り組ませる | 「伝統だから」で理不尽な要求を続ける |
| 選考の基準を説明して、足りない点を伝える | 試合出場を「気に入るかどうか」の道具にする |
| 呼んで個別に注意する | みんなの前で嘲笑する・見せしめにする |
そして、体罰についてははっきりしています。体罰は学校教育法第11条で明文で禁止されていて、けがの有無を問いません。「愛のムチ」「指導の一環」という言葉は、法律の前では理由にならないのです。
「学校の中のことだから」で済まされなかった実例を、少し一般化してご紹介します。
指導中に生徒を平手打ち・殴打し、鼓膜を損傷させるなどのけがを負わせた顧問が、刑事事件として立件された例が複数あります。「指導の一環だった」という説明は、免責の理由になりませんでした。
傷害罪けががなくても暴行罪顧問が存在を否定する暴言を繰り返し、生徒が不登校・精神的な不調に。裁判で損害賠償が認められた例があります。手を上げていなくても、言葉だけでも、責任は問われ得ます。
民事で賠償責任教員が2人きりの場面を作って生徒の身体に触れるなどの行為に及び、懲戒免職に加えて刑事事件になった例があります。
不同意わいせつ罪まず伝えたいのは、「自分が弱いからだ」と思わなくていいということです。「指導だから」と言われても、あなたの心や身体が悲鳴を上げているなら、その感覚のほうを信じてあげてください。学校の先生に言いにくければ、学校の外にも、無料で話せる場所があります。
お子さんが部活や学校の話をしなくなった、朝になると体調を崩す——そんなサインに気づいたら、まず「それはつらかったね」と受け止めることから始めてみてください。「なんで言い返さないの」「そのくらい我慢しなさい」は、事実を話す扉を閉じてしまいがちです。相談先は、スクールカウンセラー、教育委員会の相談窓口、上のSOSダイヤルが使えます。学校への相談は、日時・言われた言葉・そのときの様子をメモにしてから行くと、話がずっと進めやすくなります。
最後に、先生や指導者の方へ。責めたいのではありません。熱心な方ほど、自分が受けてきた指導を、そのまま再生産してしまうことがあります。あの頃は誰も疑わなかった方法が、今の基準では一線を越えている——そういう時代の変わり目に、いま私たちはいます。「行動を正しているか、人格を傷つけていないか」。迷ったとき、この物差しをひとつ持っておくだけで、指導の熱意はそのままに、伝わり方が変わっていくはずです。