こんにちは。日々、人と人の関係の"温度"を測っているハカルです。
たくさんの会話を測ってきて、ひとつ気づいたことがあります。ハラスメントだと言われてしまう会話の多くは、全部がダメだったわけではない、ということです。
むしろ、伝えたかった中身は正しいことが多い。ミスを直してほしい、締切を守ってほしい、もっと伸びてほしい。──ただ、その正しい言葉の最後に、ひとことだけ「余計な一言」がくっついてしまう。そこで、線を越えてしまうんです。
厚生労働省がパワハラの目安として示している考え方に、「業務上必要な範囲を超えているかどうか」というものがあります。むずかしく聞こえますが、わたしはいつもこう言いかえています。
──「仕事の話」で止まっているか、「人格の話」まで踏み込んでいるか。
「この資料、ここを直してほしい」は、仕事の話です。でも、そこに「だからお前はダメなんだ」が足されたとたん、相手の人そのものを否定する言葉に変わります。直してほしいのは資料なのに、否定されたのは本人。これが、いちばん多い"越えてしまう瞬間"です。
厚生労働省は、職場のパワハラを大きく6つのタイプに整理しています。①身体的な攻撃/②精神的な攻撃(暴言・人格否定)/③人間関係からの切り離し/④過大な要求/⑤過小な要求/⑥個の侵害(私生活への過度な立ち入り)。今日お話しする「あの一言」は、このうち②精神的な攻撃や⑥個の侵害に、するりと足を踏み入れてしまう瞬間です。
よくある3つの場面を、できるだけそのままの形で並べてみます。前半は問題のない指導。赤い一言が、線を越えさせてしまったところです。
① ミスを指摘する場面
「ここ、数字が違ってるから直しておいて」
「……何回言ったらわかるの?ほんと使えないね」
▼ 直してほしいのは数字。なのに否定されたのは"その人"。
前半だけなら、ただの確認です。あとの一言が、相手の能力や存在まで否定してしまいました。
② 締切を急ぐ場面
「明日の朝までに、ここまで進めてほしいんだ」
「やる気あんの?その気がないなら、別にいいけど」
▼ 伝えたいのは納期。なのに相手の"心"を勝手に決めつけている。
「やる気あるの?」は、事実ではなく相手の内面への決めつけです。突き放す一言は、相手を萎縮させてしまいます。
③ 誘いを断られた場面
「今度よかったら、チームでごはんでもどう?」
「えー、付き合い悪いなぁ。だからモテないんだよ」
▼ 誘いはOK。でも、断ったあとの"いじり"が私生活への踏み込みに。
誘うこと自体は問題ありません。断られたあとに出る、容姿や私生活をいじる一言。冗談のつもりでも、受け取る側には逃げ場がありません。
では、あの一言を足さないために、何ができるでしょう。わたしがおすすめしているのは、シンプルな3つです。
1.「事実」と「気持ちのおまけ」を分ける。
言いたいことは「数字を直して」までで完結しています。そのあとに付けたくなる一言は、たいてい"イライラの放出"です。中身ではないので、なくても伝わります。
2.「人」ではなく「物事」に向ける。
「お前がダメ」ではなく「この部分をこう変えよう」。矛先を相手の人格ではなく、目の前の仕事に戻すだけで、言葉はぐっとやわらかくなります。
3.言う前に、ひと呼吸。
強い一言は、たいてい"とっさ"に出ます。送信する前、口に出す前の一拍が、いちばん効く防波堤です。
とはいえ、カッとなった瞬間に、自分でいい言い方を思いつくのはむずかしいですよね。わたしも、そう思います。
そんなときの道具のひとつが、姉妹サービスのいいかた!?チェンジャーです。キツくなりそうな一言を入れると、角の立たない「今の時代の言い方」に変えてくれます。
たとえば「使えないね」を入れると、中身(もっとできるようになってほしい)はそのままに、相手に届く形へ。さらに、思わずクスッと場がほぐれる「極(きわみ)」の返しまで見せてくれます。あの一言を口に出す前に、こっそり置き換えておく。それだけで、越えずにすむ線があります。
わたしは、誰かを「加害者」だと決めつけたいわけではありません。多くの場合、悪気があったのではなく、あと一言を、足さずにいられなかっただけ。それは、忙しさや余裕のなさのせいかもしれません。
だからこそ、「あの一言さえなかったら」を、後悔ではなく次に活かせる気づきに変えたい。あなたの大事な関係が、最後のひとことのせいで壊れてしまわないように。そっと、その手前に立てたら──と願っています。